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特集
美しい村の食べもの紀行 さなのご馳走を訪ねて
徳岛県の北東部に位置する佐那河内村(さなごうちそん)は、県内で唯一の「村」。この地で農耕が始まったのは平安時代中期といわれ、1000年もの歴史を誇っている。村の中央には中峰(なかみね)山があり、水量豊富な園瀬川(そのせがわ)を抱くこの土地では、至るところで美しい里山の景色と出会える。また棚田米や果樹などの食材を生かした村ならではの「ご馳走」もある。
村の长い歴史の中で変わらずに受け継がれているのは、自然や风景だけではない。佐那河内村の住民自治组织「常会(じょうかい)」が育む村人の绊は、この村の豊かさの象徴であり、これが移住促进にもつながっている。
住民たちの中には、爱する故郷のことを「さな」と呼ぶ人もいる。実りの秋、「さなのご驰走」とそれを守り、新たな味わいを生み出そうとする村人たちを访ねる旅へと出かけた。
昔ながらの風習と景観 懐かしさを秘めた村
2016年(平成28)に设立された「一般财団法人さなごうち」は、移住や定住、交流に関わる事业や商业施设「新家(しんや)」の运営などに取り组む団体。「住民と村外のつなぎ役となれるよう、多様な活动を展开しています」と话すのは、代表理事の市原万里さん。彼女と移住コーディネーターの柏木真由美さんは、ともに结婚を机に、この村へとやって来た移住者。外からの视点で移住者に寄り添い、的确なアドバイスを行えるのが强みだ。特に常会については、あらかじめしっかりと説明を行っている。藩政时代の五人组(※)の流れを汲んでいるといわれている常会は、近隣の住民同士が伝达事项を共有し、决め事を行う组织。现在、村内には47の常会が存在しており、地域住民同士の大切なコミュニケーションの场にもなっている。「河川清扫や道路爱护活动(草刈り)などの『つじ仕事』も、常会単位で行っています。そうした机会が、移住者を集落になじみやすくしてくれているのです」と柏木さん。
一方、村には観光客を魅了する景観が点在している。雄大なパノラマを望む大川原高原、园瀬川の源流となる水波能売(みずはのめ)神社、府能(ふのう)地区の棚田、和协(わきょう)地区の半鐘。「徳岛市内からは车で约30分とアクセスは良好。ぜひ、懐かしさを感じさせる风物を见に来てほしい」と愿う市原さんと柏木さんだ。
※年贡の纳入や防犯のために近所の数戸をまとめたグループ
?いり飯」や「ういろ」 営みから生まれた郷土の味
佐那河内村の郷土料理といえば、いりこやしいたけ、ごぼうを具材としたまぜご飯「いり飯」が有名。農林水産省の「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」にも選定されている。
「昔は农作业も近所で助け合いをしていました。その后に、振る舞っていた料理なんです。鱼が手に入りにくかった时代にも、出汁用のいりこなら家庭に常备していたから作りやすかったんでしょうね」と説明するのは、妇人会の会长?长尾久代さん。もともとは嵯峨地区で根付いていたものだが、今では「村の味」として亲しまれている。具材の味付けには地元のすだち酢を使っており、爽やかな风味が食欲をそそる。
また徳岛県といえば、米粉と小豆、砂糖を原料にした「ういろ」が知られている。佐那河内村では小豆ではなく、ささげ(大角豆)を使ったういろが作られていた。「私にとって、ういろは子ども時代を思い起こさせるお菓子」と長尾さんは目を細める。徳岛県には桃の節句の日に、子どもたちが野山や磯で遊ぶ「遊山(ゆさん)」という風習がある。その日は、遊山箱(三段重の小さな弁当箱)に寿司やういろを詰めておくのがお決まり。「普段は家の手伝いや勉強に追われていましたが、この日だけは自由に遊べました。本当に楽しかった」。そんな思い出話とともに、ういろの味わいを婦人会の若いメンバーに伝えたいと考えている。
村の和柑橘を使い切るという発想
山神地区にある「山神果树薬草园」は、東京都墨田区に本社を置く松山油脂株式会社の自社農園。「当社の主事業である化粧品に使用する和柑橘の精油を求めて、国内の産地を巡っていたときに知ったのが、佐那河内村です」とリーダーを務める早川平さん。徳岛県は佐那河内村をはじめとして、多くの地域でゆずやすだちといった和柑橘の栽培が盛んであること、何より佐那河内村が6次産業化に前向きで同社を歓迎してくれたことが追い風となり、2020年(令和2)に農園とファクトリーショップがオープンした。
耕作放弃地や田畑であった土地で土づくりから取り组み、和柑橘を栽培。そこから精油を抽出し、自社のスキンケアやボディケア商品に使用するのが当初の目的だった。しかし、精油や果汁を抽出した后には大量の残渣(ざんさ)(残りかす)が生じる。これらを无駄にすることなく、100%柑橘を使い切るために、食品の製造も开始した。「私たちは搾汁后の内皮や袋、繊维质を活用してコーディアル(浓缩シロップ)やリキュールを製造しています。また最终的な残渣は、使用済みのしいたけ菌床と竹パウダーを混ぜて堆肥にしているんですよ」と「丸ごと全てを使い切る」というポリシーを彻底している。
山神果树薬草园では、近隣の生产者からも生果の买い付けを行っており、また地元の若者を採用するなど、地域への贡献も果たしている。
関东で生まれ育った早川さんにとって、この村は桃源郷のようだと言う。「农园内には村を一望できるポイントもあります。自由に散策できるので、気軽に游びに来ていただいて、ぜひ村の素晴らしさを体感してほしい」と早川さんはほほ笑む。
ユニークな屋号で唯一无二の味わいを提供
国道438号沿いで目を引くのは、「村のおっさん」という看板の豆腐店。创业は明治后期、元々は豆腐店兼食料品店だったが、2006年(平成18)に桑原年朗さんが父亲から店を引き継いで四代目となり、新しい屋号で豆腐専门店とした。
桑原さんは、まず県内の豆腐店を访ねて、味や価格をリサーチした。「同じような豆腐を作っても意味がない。远くてもわざわざ买いに来てもらえる豆腐を作りたい」と、材料と製法を研究。豆乳の浓度を高めた豆腐を売り出した。
価格の高さもあってか、最初はなかなか売れず、知名度を上げたいと各地のイベントに积极的に出店。并行して研究を続け、2年后には豆乳の浓度をさらに高めた商品を开発。全国展开する大手饮食店との取引开始が追い风となり、多くの人に知られるようになった。
また全国豆腐连合会主催の全国豆腐品评会では4回にわたって金赏を受赏。「赏を追いかけている訳ではないが、やっぱり嬉しい」と桑原さんは话す。3年前から日曜日のみ、「日曜とうふ食堂」としてランチ営业を开始。看板商品の「充填こいまろ。」や本场冲縄で学んだ「ゆしどうふ」を使った料理を提供。静かな山村に、行列を生み出している。
豆腐は全国どこでも手に入れることができるが、佐那河内村には村のおっさんが作る唯一无二の豆腐が存在している。
思い出の味覚を再现し、生み出す
のどかな棚田の景色を望む府能地区にあるのは、一栋贷しの宿や食事処を运営する「株式会社结(ゆい)プロジェクト」。代表の出口昇さんは、広岛県出身で、大手スーパーの贩売営业からホテル支配人へと転身し、后に宿泊施设运営のディレクターとして独立して、全国の施设に関わっていた。ある日、食材探しのために访れた佐那河内村で、古民家に住む地域おこし协力队员の相谈を受けた出口さん。その建物こそが、筑120年を超える古民家「旧高木邸」。「ひと目见た瞬间、何か运命的なものを感じ、队员の方が结婚のために村を离れると闻いて、すぐに大家さんに会いに行きました」と振り返る。この建物を活用したいと言う出口さんの热意が、所有者の心を动かした。
佐那河内村に住民票を移した出口さんは、荒れ放題だった建物を住民たちの協力を得ながらリノベーションし、2022年(令和4)に「千年乃宿 旧高木邸」を開業。その後、敷地内の蔵を改装した「米乃蔵」「麦乃蔵」「お食事処ゆいね」も営業している。
「ゆいねの名物は、村の子どもたちにとってなじみ深い料理なんですよ」と出口さん。今から30年ほど前から、村の小中学校の给食で提供されていた「さなごうち扬げ」をアレンジして提供しているのだ。これは鶏肉の唐扬げに甘酢を络めた料理で、酸味にはすだちを使っている。
実は出口さんは佐那河内中学校の「ふるさと学习」に协力しており、アレンジしたさなごうち扬げは授业の中から诞生したそう。他にもゆずやすだち、柚香(ゆこう)など村の特产物を使った新たな名物を、子どもたちと一绪に开発中だ。
「村を离れた方にも、思い出の味を通して故郷への爱着を思い起こしてほしい」と愿う出口さん。メニュー开発に関わった中学生にとっては、かけがえのない记忆となるはずだ。
いり饭、豆腐、さなごうち扬げ。「さなのご驰走」は决して高级食材を使ったものではない。だが、口にした瞬间に思わず笑颜になり、作り手たちの颜が思い浮かぶ、そんな魅力に満ちている。
(一财)さなごうち(新家)
- 住所
- 徳岛県名東郡佐那河内村上字宮前84-1
- 电话番号
- 088-636-4030
- ホームページ
山神果树薬草园
- 住所
- 徳岛県名東郡佐那河内村下字山神43-2
- 电话番号
- 088-679-2277
- ホームページ
村のおっさん(桑原豆腐店)
- 住所
- 徳岛県名東郡佐那河内村上字宮前64-3
- 电话番号
- 050-8883-1678
- ホームページ
(株)结プロジェクト
- 住所
- 徳岛県名東郡佐那河内村上府能104
- 电话番号
- 090-2008-7303
- ホームページ



























